資金繰り、資金調達の視点から見る 会社の保険戦略
①「出口戦略」のない保険は、ほぼ意味がなく、あるいはリスクになる。
会社の保険を解約した時、保険会社からお金が支払われます。
この戻ってくるお金を解約返戻金と言います。
解約する時期によって金額は変わりますが、上手く活用すれば、ほとんど、またはそれ以上の金額が返ってきます。
支払った保険料の少なくても90%以上、できれば95%以上は戻したいところです。
言えることは、経営者が入っている保険によって、会社はキャッシュの一部を保険会社にプールしておき、解約時にお金を解約返戻金として取り戻すことができるわけです。
保険会社はキャッシュの一部を預ける銀行であると位置づけても良いでしょう。
解約返戻金の返戻率は、解約する時期や経過年数、商品によって変わります。
例えば、「加入して1年目の返戻率は5%だが、5年目なら95%」という商品があります。
いつ解約するかによって、キャッシュの動きが全く変わるので、保険の加入時に出口戦略、つまり、いつどのタイミングで保険契約をどう活用するかを入念にプランニングする必要があります。
保険契約の活用とは、解約して返戻金を受け取ったり、自由に資金を引き出したり、
さらには、名義を変更したりすることを指します。
かつて会社の保険は、出口効果よりも入口効果のほうが重視されていました。
それは、法人税が約44%と非常に高かったため、入口の節税効果が今以上に大きかったからです。
最近は、法人税率は引き下げ傾向にあるので、節税のインパクトが弱くなっている印象は否めません。
現代、会社の保険を活用するにあたっては、もちろん入口戦略も重視しながらも、
出口の戦略をいかに重視するかがポイントになっています。
なぜなら、保険の解約時に解約返戻金を受け取った場合、その全部、もしくは一部が「雑収入」となり、儲けとして課税対象になります。
入口で節税できたとしても、出口で税金を支払わなければならないのであれば、単純に「税金の先送り」をしているにすぎません。
ゆえに、あらかじめ将来的に資金を使う予定を踏まえて保険を設計することができればベストです。
・5年後に自社の機器を買い替える予定だ
・だいたい8年後には社屋の内装を全面的に改装したい
などと分かっていれば、その頃解約返戻金を受け取れるようにプランニングすればよいのです。
解約返戻金から支出すれば、その支出分の一部または全部は「損金」となり、その分相殺されて節税することができます。
ここをマネジメントできていなければ、保険に加入した効果が薄くなってしまう恐れもあります。
キャッシュを守るためにも、出口戦略をきっちりプランニングすることが重要です。
しかし、
会社経営を行っている限り、最初に行ったプランニング通りに事が進むことはほぼあり得ないでしょう。予期せぬ様々な出来事が起こります。その起こる出来事に対して、常に打ち手を持つことが本来のマネジメントです。
出口戦略とはこのマネジメント戦略です。ここの判断の違いで、会社の資金繰りの状況が一変します。